幻の納豆復活プロジェクトが始まりました

株式会社キツ商会 (秋田県横手市 代表:阿部久和)は、無農薬の藁に自生する天然納豆菌で大豆を発酵させる伝統製法の「大屋納豆」を約50年ぶりに復活させ、地域の障害者と共に製造・販売するソーシャルビジネスプロジェクトを始動させました。

農村で古くから伝承されてきた幻の「大屋納豆」は、豆本来の風味と絹の様な糸が特徴で、一度食べたら忘れられない味わいです。

私たちは自然製法にこだわって試行錯誤を重ね、全国的にも珍しい天然菌での納豆製造を実現させました。この大屋納豆づくりを福祉事業、そして地域おこしを組み合わせることで、障害者の経済的自立と過疎高齢化の課題解決を目指します。

令和2年12月頃の販売開始を予定しており、将来的には障害者就労支援施設を設立する計画です。

 
 
 

大屋納豆とは

秋田県横手市の「大屋の里」には、源義家と納豆にまつわる伝説が伝えられています。

平安時代末期、後三年の役での合戦時。

進軍中の義家と一行は、現在の大屋地区付近で大雪のため足止めされます。

食料に困った義家は、近隣の農民に大豆を煮させるとワラで包んで馬の背中に積みました。

馬の体温で暖められた煮豆はやがて、糸を引き香りを放ちはじめます。

ワラに住む納豆菌で、煮豆が発酵して納豆になったのです。

食べてみると大変おいしく、義家は農民に納豆の製法を教えました。

これが古くは千年近い歴史をもつといわれている「大屋納豆」の始まりです。

その後も大屋の里では、冬になると納豆を作り続けました。

納豆作りの主役はお年寄り

昔の大屋の里の農家では、各家に石室が作られていました。

石室の中に焼けた石を備えて、その熱で納豆を発酵させるためです。

こうして作った納豆は、各家の「ばっぱ」(お婆さん)が売り歩き、その姿から「大屋の納豆売りばっぱ」と親しまれていました。

まだ夜が明けぬ暗いうちから、できたての納豆を山のように担いで行商に出ます。

真冬の雪深い道を、最寄りの町への往復だけで8㎞以上。

その後もひたすら歩いて、お得意さんに納豆を売りました。

行商するお婆さんの健脚は、天然の健康食品である「大屋納豆」のおかげでしょう。

最盛期には、当時一村73軒あった家の内、70軒は大屋納豆を作っていたといわれています。

大屋納豆を行商するキツ

創業者の曾祖母である阿部キツも、納豆製造販売に取り組んだ一人でした。キツの作っていた納豆は評判がよく、県内外に招かれ納豆の製造指導をすることもあったそうです。

しかし、食生活の変化や営業許可の厳格化等により、昭和40~50年頃には製造が途絶えてしまいます。  この幻となった大屋納豆を再現したのが当社の「秋田の大屋納豆」。私たちが復活させた大屋納豆には、この曾祖母キツ伝承の技術が生きています。

現代の納豆

納豆は藁に自生している納豆菌で大豆を発酵させる発酵食品です。

しかし、私たちが食べている納豆には藁は使われていません。

それなのになぜ納豆ができるのでしょう。

それは、選別した納豆菌を人工的に培養した「純粋培養納豆菌」が使われているからです。

この培養した納豆菌を蒸した大豆に添加して、プラスチック等の容器に詰めます。

そして、容器ごと自動制御された巨大な発酵室で発酵させます。

私たちが食べている一般的な納豆

こうした納豆の多くが外国産大豆を使用しています。

高価な国産大豆を使用している納豆は2割程度。

より希少で高価な無農薬栽培の国産大豆はほとんど使われていません。

つまり現代の納豆は「培養した納豆菌、自動発酵技術、安価な大豆」によって安定した多量生産を実現しているのです。

藁で包まれた納豆については現在も観光土産として販売されていますが、実は人工培養の納豆菌を添加して発酵させたものがほとんどです。

つまり伝統的な藁納豆と違い「納豆の容器として藁を使っている」だけのものが多いのです。

大屋納豆の味わい

一方、私たちが作る大屋納豆は、藁の天然納豆菌だけで発酵する「本物の藁納豆」です。

原料には無農薬栽培の国産大豆と、無農薬栽培の国産藁だけを使用しています。 

理由は、昔と同じ素材を使い、安心して食べられる納豆を作るため。

そして納豆菌の発酵力を最大限に生かすためです。

古来製法で作った大屋納豆は味や香りも、現代の納豆とは異なります。

藁が匂いを吸収するため、納豆独特の匂いは控え目。

また天然納豆菌で発酵させることにより、かき混ぜると絹糸のようなふんわりとした糸を引きます。

そして何よりも、豆の風味と野趣あふれる味わいは一度食べたら忘れることができません。

塩か生醤油など、シンプルな味付けで豆本来の風味を楽しむことができる逸品です。

大屋納豆の復活

当プロジェクト代表の私は県外で暮らしながらも、いつか故郷の地域活性に携わることが出来ればと考えていました。

そんな時、曾祖母の作った「幻の大屋納豆」の話を聞いたのです。

これは地域の名産になると考えた私は、大屋納豆の研究を始めました。

しかし、大屋納豆の復活には多くのハードルがありました。

まず、藁の納豆菌だけで発酵させる難しさです。

初期の試作品

大屋納豆は、藁の天然納豆菌で発酵させる本物の納豆。

しかし、現代の衛生基準では昔の製法で作ることはできません。

納豆を包む藁(藁筒)一つとっても、洗浄・殺菌した清潔な藁を使用する必要があります。

そのため、藁を煮沸して十分に殺菌消毒しました。

納豆菌は熱に強いため、高温で雑菌が死滅しても納豆菌(胞子)は藁の中に生き残るはずです。

しかし、生き残っていた少量の納豆菌では安定した発酵ができません。

何度も試行錯誤した結果、やはり昔と同じように無農薬栽培の藁と大豆を使うことにしました。

これにより、納豆菌の発酵力を最大限に生かした安定発酵が可能になったのです。

安定した発酵に成功

私たちはその後も、曽祖母の製法を用いながら現代人の好みに合う大屋納豆の再現を目指しました。

同時に、発酵設備や衛生管理技法は、現在の衛生基準に適合するよう改良を重ねました。

その過程では、10数年前に同じく大屋納豆の再生を試みた地域の研究家からも貴重な助言を頂きました。

こうして色々な種類の大豆や藁を使い、試作を重ねること数百回。

実に2年近くもの試行錯誤を重ね、私たちは大屋納豆の再現に成功したのです。

市販用の試作品

 

https://youtu.be/DpdYnq9tg1Q
https://youtu.be/SzpIQYqR614

商業化への壁

しかしプロジェクトの商業化に向けては、原料コストという壁が立ちはだかりました。

無農薬栽培の原料を使うため、原料費が一般的な納豆の20倍以上になるのです。

販売価格が高くなりますが、田舎でこれほどの高級品は売れません。

さらに、伝統納豆ならではの生産性の悪さも大きな問題です。

大屋納豆は無農薬の藁を多量に使いますが、その藁の加工には多くの人手を必要とします。

収穫した稲をはぜかけして、藁を収集するのも、藁を一本ずつ選別して加工するのも、すべてが人の手作業です。

さらに納豆菌の自然発酵に任せるため、製造時間も通常の倍以上が必要となります。

膨大な人手と時間を要し、多量生産によるコストダウンさえできない・・・。

どう試算しても採算が取れない・・・。

こうして八方ふさがりになったときにひらめいたのが、

非効率性を逆手に取り、福祉や高齢化の社会問題を解決する「ソーシャルビジネス」として展開することです。

ソーシャルビジネス=環境・貧困など様々な社会的課題の解決を図るための取り組みを、持続可能な収益事業(ビジネス)として行うこと。

納豆で障害者雇用と地域活性化を

私たちが手掛ける「大屋納豆」プロジェクトは、伝統納豆と福祉を組み合わせたローカルベンチャー事業です。

藁の加工は非効率的で多様な工程があり、多くの人手を要するからこそ、障害のある人たちが活躍できるのではないかと私たちは考えました。

事業では藁の加工を障害者授産所に委託することで、納豆の生産を通じて障害者の雇用確保と収入増を目指すほか、独居高齢者にも委託して仕事を通じたつながりややりがいを創出していきます。

当プロジェクトでは、初めにパイロット事業として納豆製造工場を設立します。そしてインターネット通販のみで販売し、希少価値の高い伝統納豆として全国に販路を広げます。

その後、安定した販売量を確保できた時点で、別事業として「就労継続支援施設A型」を立ち上げます。

この施設では、藁を加工して納豆工場に販売するだけでなく、マーケティングや、webサイトの管理、商品発送管理などの業務も受託して収益化します。

そのため施設職員には福祉経験者だけでなく、ITやマーケティングに興味のある若者も雇用します。

これによって障害者の支援を通じた福祉ばかりでなく、地域に根差したITマーケティングの習得を通じ、将来的に若者が地方で生活しながらお金を稼ぐ力を育成することも出来ます。

そして、この事業で障害者の給与は施設の利益から、支援する施設職員の給与は国の支援費からという、新たな雇用が地域に生まれます。

※就労移行支援事業A型事業所=障害や難病のある方が、A型事業所と雇用契約を結んで、一定の支援を受けながら働くことができる福祉サービス。本来は、利用者が働いた利益の中から最低賃金以上の給与を支払うように定められている。しかし賃金に見合う仕事は少なく、7割以上の事業所は利用者の賃金も公費に依存して運営している。

(厚労省の資料では、H29年度 秋田県内のA型事業所の月平均賃金が64,167円)

障害者の抱える経済問題

障害を持つ方の中には、働く意欲があっても一般就職が難しい方も多く、そうした方は福祉的な就労施設で働きます。

その場合、施設からもらえる給与(工賃)は全国平均で月1万5千円程度。

(厚生労働省調査 平成 28 年度工賃の実績)

時給にして200円に満たない給与です。(地方ではもっと低いですが・・・)

この給与では障害年金と合わせても生活保護以下の収入。

施設も様々な工夫で給与アップを目指していますが、競争力の低い製品の製造販売や、企業からの内職仕事が多く、大幅な収入増には至っていません。

「障害を持つ方が普通の収入を得られる仕組みができないか」

これは私が20年前に知的障害施設で実習してからずっと考えてきた問題でした。

そんなことは自分には関係ない、特別な人たちの話だろうと思うかもしれません。

本当にそうでしょうか?

例えば普通に勤めていた人が、精神疾患や病気・事故等で重い障害を負ったとします。

業務を工夫して、以前と同じ条件で迎えてくれる会社もあるでしょう。

しかし、すべての人が幸運にもそんな会社に勤めているとは限りません

もし一般就労が困難な障害を負った場合、同じように福祉的な就労を選択することは誰にでもあり得ます。

200円にも満たない時給をもらった時、あなたはどう感じますか?

これは誰にとっても他人事ではありません。

ハンディを持った方でも、自分の能力を生かして経済的な自立ができる。

そのためには障害者が月に8万円以上を稼げる仕事が必要です。

※障害年金=病気やけがで一定の障害のある人が受け取れる公的年金。障害基礎年金、障害厚生年金などにわかれており、最も受給者が多い障害基礎年金の場合、1級で月約8万1000円、2級で月約6万5000円が支給される。

地方が抱える社会問題

さらに地方が抱える大きな社会問題が、急激な人口減少と高齢化です。

若い世代が都市部へ流出して人口は減少。高齢者の割合だけが増えつづけています。

ここ秋田県では、2019年の高齢化率は36.4%と全国で最も高い水準にあり、2045年には県内人口が41%も減少すると予測されています。

社会的な活力低下にとどまらず、将来のコミュニティー存続すら危ぶまれている状況です。

今私たちの地域で求められているのは、若者がやりがいを感じる新しい仕事を創出すること。そして、高齢の住民も社会とのつながりを維持し、安心して住み続けられる地域にすることなのです。

伝統×福祉で社会問題の解決を

非効率な自然製法にこだわるからこそ、唯一無二の味わいが生まれる大屋納豆。私たちはたくさんの人の手を要するこの事業を通じ、「障害者が月8万円以上稼げる」新しい雇用の場を作ります。そして若者には、「楽しくて・仕事と生活が調和でき・人のためになる」就労の場を、高齢者には「無理なく働くことで社会とつながり続ける機会」を創り出していきます。

大屋納豆プロジェクトでは、農村の知恵と誇りが詰まった大屋納豆という地域資源を最大限に活かし、「伝統×福祉」で社会問題の解決を実現します。